古豪

  
 立教大学体育会テニス部の100周年を、心からお祝い申し上げます。時代が変わり、メンバーが毎年変わってゆく中で、多くの名選手を輩出し、常に関東大学テニスリーグの上位で戦い続けてきているのは、現役部員の不断の努力もさることながら、OB・OG等関係者の暖かいご支援があったればこそと存じます。
 
 私が入部した2008年は、ちょうどアスリート選抜入試が始まった年であり、名門校出身の同期・後輩たちとテニス部での4年間を過ごしました。3年次には4部から3部へと昇格。全国レベルで戦ってきた仲間たちに囲まれ、OB会からは手厚いサポートを頂き、強い立教の復活に、確かに近づいていると感じていました。しかし連続昇格を目指した最高学年では、2部の入れ替え戦で完敗。あの日、駒沢大学での自身の敗戦と、仲間たちの涙する姿は、卒業から4年が経った今でも鮮明に脳裏によみがえります。
 
 2部校、1部校の選手たちはジュニア時代に全国大会で上位入賞を果たし、中には全日本選手権でプロ選手と渡り合った経験をも引っさげ、鳴り物入りで大学テニスに参戦してきます。名門校出身の選手が増えたとはいえ、まだまだその差が大きいことを知らしめられました。
 
 ですがいかにして強者を食うかこそ、勝負事の面白さ・やり甲斐であります。そう改めて感じさせられた物語が、最近も一つ。本稿を執筆している今、私の故郷である香川県の高松商業高校が、選抜高校野球で決勝に進出しました。エリートたちが県外に引き抜かれ、優秀選手が県内の強豪校に進学し、残った地元民だけで構成された公立高校のチームが、並みいるスター軍団を下して全国の高校球児たちに光を与えました。
 
 この高松商業高校、実は新星でなく1924年の第一回大会優勝校。ドラフト候補も不在の中、一瞬の勝機を捉える伝統の勝負勘と、各選手の特徴を活かした全員野球で55年ぶりの決勝に勝ち進んだ古豪の姿に、私はつい本学テニス部を重ね、テレビの前でひとり想いを馳せました。
 
 「古豪」とは響きこそ寂しいかもしれませんが、偉大な諸先輩方、受け継がれてきた伝統、そして近年の敗戦の中から得た多くの学びという、素晴らしい財産が存在するということであります。現役部員たちには、100周年を迎えるにあたり、この期を大きな節目として、より充実した将来を展望してもらいたいと念じてやみません。

平成24年卒 山崎絢史郎