走馬燈のように

 
女子のリーグ戦応援の為、富士見総合グランドに出かけた。
富士見グランドへ行くのは卒業以来初めてだった。
志木駅前のバス停で、列を作りバスを待つ学生の多さにまずビックリ。
終点でバスを降り、目の前にそびえ建つ立派なクラブハウスにまたもやビックリ。
テニスコートに着いて、ここでもビックリぽん。
コートの脇には倉庫も、綺麗なトイレも用意されていた。
しかし(当然の事ながら)ローラーは無かった。
常に風が吹き荒れ、砂埃にまみれたかつてのクレーコートはすっかり姿を変えていた。

「コート整備にローラーを引っ張るなんて、もう時代が違うのよ。」と言われた。
クラブハウスの中も機能的で明るい雰囲気に。
あの当時、富士見で合宿していた男子が言っていた「お釣りがくるドボチャン便所」は、
明るく清潔なウォッシュレットとなっていた。
そういえば、あの頃、女子部同期のYがその穴にトイレ用サンダルを落としたと言って騒いでいたっけ。
当然、テニス自体もリーグ戦の戦い方や応援の仕方も我々の現役時代とは全く様変わりしていた。

しかし、根底に流れる立教精神は全く変わっていなかった。
同じリーグ戦での他校との試合。
会場は相手校コート。
朝からの雨で試合開始は延び延びとなっていた。
そんな中、一生懸命に布でコートの水を拭き取っているのは我が立教の部員のみ。
相手校のメンバーは悠々とおにぎりを頬張り、お茶を飲んで雑談していた。
「なんで、立教の部員ばかりがコート整備して、あちらは何にもしないのよ?」
と私が憤慨している中でも、我が校の女子部員達は当たり前のように黙々と整備を続けていたのだ。
この姿には甚く感動。

そういえば、我々が新学院コートで練習していた頃も雑巾を使っていたなぁ。
ある時、コートの脇に捨てられていた大きな座布団用のスポンジを、これ幸いと思い、
コートの雨を吸い取るのに使っていたら、上級生に「そんな横着をするなんて、なんたる事。」と怒られたっけ。
雨が降った翌日のコート整備の為に、朝6時頃コート集合と決め、まだ鍵のかかっているフェンスをよじ登って
コートに入って整備したっけ。

調布から通っていたMは、暗闇の中、始発に乗って来ようとしたところを、家出少女と間違えられて、
警察官から尋問されたっけ。

そういえば、こんな事もあった,あんな事もあったとあの当時の想い出が走馬燈のように蘇ってきたその時、
「ナイスショット!」歓声と拍手が聞こえた。

ふと我に返り、横を見ると、そこには、当時と変わらぬ同期の笑顔があった。